50歳から結婚してみませんか?アラ還・男女が結婚相談所に入会するそれぞれの事情 (前編)「宗教」が仲取り持つ?(AERAdot.)
2月8日(金)電子書籍:AERAdot. に、茜会で成婚されましたご夫婦がご紹介されました。
「私たち、結婚しました!」――続けて届いた2通の結婚報告はがき。お葬式に参列することのほうが増えていたというのに、まさか同年代である50代の友人から結婚話を聞かされるとは。もしかして、と調べたところ、ここ20数年で50歳前後の結婚増加が判明。総数から見れば少ないものの、“50歳からの結婚”が増えていることは間違いないようだ。連載「50歳から結婚してみませんか?」では、結婚という大きな決断を50歳で下すことになった女性の本音とリアルに迫る。第21回は、中高年向けの結婚相談所で出会った川上芳子さん(仮名・57歳)、久志さん(仮名・62歳)夫婦の前編をお届けする。
川上芳子さん(仮名・57歳)と久志さん(仮名・62歳)は、まるで何十年も連れ添ったご夫婦のように見えるが、入籍して5カ月の新婚。加えて驚いたことに、ご主人の久志さんは剃髪し、袈裟をまとった僧侶姿で登場。平日は市の職員として働き、土日は自宅近くのお寺で僧侶として、ボランティアでお寺の仕事を手伝っている。
凛々しい久志さんの横で上品に微笑む芳子さん。そんな2人はどこで、どうやって知り合ったのだろうか?「2017年の2月に、中高年向けの結婚相談所の“茜会”に入会したんです。11月に開催されたパーティで主人と会ったのが最初です」
久志さんは、同年の9月に茜会に入会し、芳子さんが来ていたパーティに参加した。
「そのパーティで、主人から連絡先を書いたメモをもらったんですが、私は時間がなくて自分の連絡先を書けず、渡せなかったんです。で、結局マッチングには至らず……」パーティでうまくいかなかった芳子さんは、1人で駅に向かっていた。大きなターミナル駅は、乗降客でごった返していたが、そこでばったり久志さんと会う。
「『今がチャンス!』と思いました。僕から彼女に『お茶でも飲みませんか?』って声をかけたんです。せっかくだからと、そのあたりではいちばん高級なホテルのラウンジに誘いました。気になっていた人に偶然会えて、舞い上がってましたが、コーヒーが一杯2000円近くして、ちょっと慌てましたけれど(笑)」
■おじと道元が取り持つ縁!?
「彼は曹洞宗のお寺に通っていて、定年後は僧侶として働きたいと話してくれました。私はと言うと、ちょうど曹洞宗の開祖の道元の本を読んでいまして。その頃、おじに『人生考えていて……』と相談したところ、『この本を読むといいよ』と勧めてくれたのが道元の本だったんです。こんな偶然があるのかと驚きました」
男女にかかわらず、宗教の話は敬遠されがちだが、会ったその日にいきなり心の深いところで通じ合うことになったのだ。
芳子さんは渡しそびれた連絡先を、その場で久志さんに渡すことができた。
そして3日後、久志さんから電話がかかってくる。「家の近くに来ているので会ってくれませんか」という連絡だった。仕事に行く途中の駅が芳子さんの家の最寄駅で、どうしても会いたくなった久志さんは、帰りに寄ろうと勇気を出して電話をかけたのだった。
「仕事の後、たった1時間ほどなのに、わざわざ電話をくれて、すごくうれしかったです」
男女がつき合い始めるのに、年齢は関係ない。芳子さんは少女のようにときめいていた。
■結婚相談所に入会したそれぞれの事情
芳子さんは、約20年前に離婚。結婚生活は10年以上あったが、「二度と結婚は嫌!」と泣いて両親の元に帰り、男の人とは当分つき合いたくない、とまで思っていた、と言う。ずっと両親と自分の3人で仲良く暮らしていくものと思っていたが、はっと気がつけば、両親は90歳近くなり、友人や知人の再婚話を聞き、「結婚」という選択肢もあるのだと思うようになったと言う。結婚相談所に入会したのは、そういう気持ちの変化があったからだ。
久志さんもまた、14年の結婚生活を経て、42歳で離婚。が、久志さんは少し違っていた。20年近い独身生活、身の回りのことは独身でも不自由はなかった。
「正直、結婚願望はなくて、お茶飲み友達のような恋人がほしかったんです」
そんな少し温度差のある2人だったが、パーティで出会ってから半年後には結婚することになる。縁とは不思議なものだ。
(取材・文/時政美由紀)