50代と60代の再婚 病気で別れの危機も? 熟年ゆえの迷いと気づき(後編)50歳から結婚してみませんか?
「私たち、結婚しました!」――続けて届いた2通の結婚報告はがき。お葬式に参列することのほうが増えていたというのに、まさか同年代である50代の友人から結婚話を聞かされるとは。もしかして、と調べたところ、ここ20数年で50歳前後の結婚増加が判明。総数から見れば少ないものの、“50歳からの結婚”が増えていることは間違いないようだ。連載「50歳から結婚してみませんか?」では、結婚という大きな決断を50歳で下すことになった女性の本音とリアルに迫る。第22回は、川上芳子さん(仮名・57歳)、久志さん(仮名・62歳)夫婦の後編をお届けする。
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中高年向けの結婚相談所のパーティで出会い、つき合いが始まった川上芳子さん(仮名・57歳)と久志さん(62歳)。
しかし、つき合い始めてすぐに“危機”が訪れる。
「私が冬場に体調を崩して、入院することになったんです。後で聞いた話なんですが、主人は私の体が弱いのではないかと心配になり、別れることを考えたようなんです(苦笑)」
後ろ髪を引かれる思いの久志さんは、このままでは忍びないと、病院にお見舞いに行く。すると……、芳子さんは満面の笑みで久志さんを迎えてくれたのだ! 別れようと思って会いに行ったのに、その笑顔を見た瞬間、久志さんの気持ちが変わる。
「そんなにニコニコしていたんですかね。私は、彼に会いたくてしょうがなかったので、お見舞いに来てくれて本当にうれしかったんだと思います」
幸い、芳子さんの体調はすぐに回復し、久志さんが心配するようなことはなかった。
■仏教の教えに逆らっているのは自分自身だった!
「体が弱いのでは、という理由で、おつき合いをひるんでしまって。なんとも情けないです。でも、彼女は僕のことを待っていてくれた。そして、その笑顔を見た瞬間、僕も彼女に会いたかったんだって、気がついたんです」
たまたま芳子さんが体調を崩しただけで、自分が病気になることだってある。つき合い始めたばかりなのに、どうして先を憂うのか。今を生きずに、どうして先の心配ばかりするのか。まさに、仏教の教えに逆らっていたのは、自分自身だと気づいたのだ。
それから、4カ月後の5月、2人は入籍。パーティでの出会いからたった半年だった。
久志さんの1LDKのアパートに、芳子さんは椅子2脚とわずかな家財道具と衣類を持って引っ越してきた。椅子の1脚はピアノ用で、結婚を機に電子ピアノを購入。幼いころからピアノを習い、保育士の免許も持っている芳子さんがピアノ、久志さんはロシアの民謡楽器バラライカを弾いて、2人で共通の趣味の音楽も楽しんでいる。
■2人で決めた誓いの言葉
結婚式は挙げていないが、2人で宣誓文を作り、サインをした。その「二人の誓い」は以下だ。
1 私たちは生涯にわたり、伴侶を大切にします
2 私たちは生涯にわたり、伴侶を尊重します
3 私たちはお互いを愛し、邪淫はいたしません
4 私たちは炊事、洗濯、掃除等の家事を厭いません
5 私たちは借金はまったくありませんし、今後もしません
6 私たちは賭け事はいたしません。今後もおこないません
7 私たちは釈迦の教えを心柱として、明るい家庭を築きます
8 私たちはお金の無駄使いはいたしません
9 私たちは健康に留意いたします
以上、誓います。
久志さんの言葉が印象的だ。
「僕は、親が口を挟んできたから離婚することになったんだと、ずっと親を恨んでいました。でも、原因は自分にあったんです。彼女と会って、自分の人生は自分の責任で決めなきゃいけない、自分の人生なんだからって、ようやく気づいたんです」
久志さんの心を変えたのは、芳子さんの笑顔だった。
(取材・文/時政美由紀)