中高年のお見合いのすべて「後編」。作家・僧侶 家田荘子さまのリポート
茜会 大阪支店で出会い、結婚に至った二人の65歳の女性から、成功の秘訣を聞かせてもらうことにした。
「息子のお嫁さんとうまくいかなくて、人生を変えてみようかなと入会したんです。でも、サロンパーティーで男性から
『収入はいかほどで?』って聞かれ、びっくりしちゃって。『もうやめたい』って事務局に言った後、最後に出会った人
からOKが出たんです」
張りのある低い声でしゃべる長谷川さんは、澄んだブルーのシャツに白いパンツを合わせ、おしゃれだ。
関西大学卒で、和装洋品店卸業の会社役員を務める年収700万円の夫(67)と出会ったのは、長谷川さんが
入会して8カ月後のことだった。
長谷川さんは「相手を尊敬できなくなって」、25年前に離婚した。
茜会の場合、書類審査でOKが出ると、お見合いの日を決める。
相手とは、すぐにお見合いが決まらなかった。
「失礼な人だわと思ってたら、『海外旅行へ行ってました』って、やっと連絡がきて。会ったら話が
弾んで『今度、旅行に行こう』って誘われたんです。『どこへ行きたい?』と聞かれたから、気軽に
『イタリアのクレモナ』って言ったら、トントン拍子に進んじゃって。これは大変だ、って娘に会って
もらいました。
相手は、海外にスキーに行くほどのアウトドア派。出会って間がなくても、旅行へ行けば、同じホテルの
部屋で過ごすことになる。「たまたま淡路島のホテルの宿泊券があったから、『行きませんか?』って
誘ってみたんです。だって、一緒に夜も過ごしてみないとわからないでしょう?食事の仕方も見ることが
できるし…」男性の食事の仕方がきれいかどうかは女性にとって大切なポイントである。
淡路島のレストランで食事をすませ、その夜、2人は初めて結ばれた。
64歳で再婚する人生設計はなかったが、食事をしたりする男性には不自由していなかったと長谷川さんは言う。
しかし、更年期をすぎた年齢でも、できるものだろうか。その時のことを尋ねると、一瞬、長谷川さんは言葉に詰まった。
頬がほんのりピンクに染まっていく。
「そうですね。やっぱり男性やからね…」長谷川さんは言葉を何度も切った。
「受け入れる気持ちがあるかどうかだと思います。その人に対して、何か不安があったりするとできないと思いますから」
その笑顔は、女性としての自信にあふれていた。
生活は大阪と京都で半別居状態だが、「私も仕事をしているから、ストレスがたまらなくて最高の状態です」
大阪からわざわざ千葉県佐倉市まで夫と出かけて買ったというメガネの奥で、長谷川さんは目を細めた。
茜会 大阪支店長の笹原郁美さんは「60代の結婚が一番難しい」と言う。
「60歳から65歳って、一番収入がさがる時なんです。『年収じゃない』って、その世代を求める女性には、
お話をするんですけど、大卒とか、背が高いとか、女性の求めるものは若い時と変わらないんです」
ちなみに嫌われる男性は、「優柔不断。上から目線。過去の女性や妻のことを言う人。何も行動をしない人」
長谷川さんと恵子さんは、一歩前で出たから、結婚のチャンスに出会えたのではないだろうか。恋や結婚は、
年齢に関係なく、自らの手でつかみにいくものなのである。