中高年のお見合いのすべて「前編」。作家・僧侶 家田荘子さまのリポート
若くないんだから、ある程度妥協せんと。(談:娘より)
恵子さんは薄化粧で、黒白柄のワンピースがよく似合う、こざっぱりしとした女性。
現在は産婦人科病棟で、ルームアテンダントをしているが、婚約者の家の改築が終わり、
婚姻届を出したら、寿退社の予定。
「娘が出産した時に、『これからはお母さんの人生を楽しんで、結婚したら?』って言ったんです。
お茶飲み友達ならいいかと入会した最初の会はひどくて。五十数万円も払い、
パーティーの度に1万円。出会いがないまま2年経った時、やめますと言ったら、1人紹介されて
9ヶ月つき合ったけど、サクラで…。それで長谷川さん(茜会で成婚)に誘われて茜会に入ったんです。」
茜会に入ると、お見合いをくり返していた。娘からは、「理想ばかり言ってたら、あかねんねん。若くないん
だから、ある程度妥協せんと」とアドバイスを受け、けしかけられて勇気を持った後に出会えたのが、
現在の婚約者で神戸の高級住宅地に住むツトムさんだった。
「梅田で会って、ハイキングとかウォーキングとか、野菜を作ってる話とか、コーヒー一杯で2時間も
話し込みました。仕事が終わった後でおなかがすいてるのに言えないまま……」
相手は、大手生命保険会社を定年退職後、両親が建てた家と畑で年金生活を送る男性だった。
しかし、彼は結婚についてはまったく触れようとしない。
「私、どういう風に思われているのかわからなくて…。彼が何も言ってくれないから、焦りがあったん
だと思うんですね。居酒屋でご飯食べながら、『今住んでる所は家賃が高いから、少し安い所へ
移って生活する計画を立ててます』って、伝えたんです。そしたら『偉いなぁ。僕なんか、何にも
立ててない。結婚2年で離婚されて失敗してるから、もうちょっと待って』って言われました」
2ヶ月後、スーツを着た彼は、恵子さんを同じ敷地に住む兄に会わせ、それから両親の墓前に連れて
いって、「将来、一緒になろうと思うからよろしく」と紹介された。そこで気の短い恵子さんが酔っぱらった
ついでに「ホテル行こか」と誘ったが、「いや、明日早いから帰るわ」と逃げられた。
出会いから7ヶ月後、恵子さんは「朝早く花見に行くから、前の日に(うち)に来ない?」と招待された。
「年寄り向きのパジャマと枕カバーが用意されてました。量販店で買ってきたって。でも、センス云々よりも、
優しいなって思いました」
20代の結婚と違い、人間ができ上がっている者同士の結婚は、違うものが多すぎて、とても難しいと言われて
いる。ところが恵子さんも友人の長谷川さん(茜会で成婚、後編に登場)も幸せそうで、肌もツヤツヤしている。
その後、恵子さんの彼(ツトムさん)は、築40年の家を数千万円もかけて、新婚生活のためにリフォームを始めた。
「選んでいただいてありがとうって感謝の気持ちが大切。それと、言うべきことは、はっきり伝える」
恵子さんは、真顔でうまくいくコツを語った。
後編につづく。